神社本庁

日本人の霊魂観―靖國神社信仰の底流―

人を祀る神社

 国家や地域の功労者を祭神として祀る神社は、もちろん靖國神社だけではありません。

 東京の都心に位置し、東京の鎮守の森として多数の参拝者で賑わう明治神宮は、明治の国作りを導かれた明治天皇・昭憲皇太后を祀る神社です。京都では、平安建都の英主桓武天皇、平安京最後の孝明天皇をお祀りした平安神宮が有名です。

 南朝の本拠地であった吉野には、後醍醐天皇を祀る吉野神宮、大津京のあった滋賀県大津市には天智天皇ゆかりの近江神宮が鎮座しています。また南朝の忠臣を祀る神社として、楠木正成を祀る神戸の湊川神社、名和長年を祀る鳥取県の名和神社、新田義貞を祀る福井県の藤島神社、護良親王を祀る鎌倉宮等があります。

 大名を祀る神社も、上杉謙信・鷹山を祀る米沢の上杉神社、徳川光圀・斉昭を祀る水戸の常磐神社、前田利家を祀る金沢の尾山神社、島津斉彬を祀る鹿児島の照國神社など多数あり、それぞれの地域の人々から崇敬されています。

 日露戦争の英雄・乃木大将を祀った東京の乃木神社、同じく日露戦争での日本海海戦の英雄、東郷平八郎を祀った東京の東郷神社、また農政家の二宮尊徳を祀った小田原市の報徳二宮神社等もよく知られています。

 このような偉人・英雄を祀る神社創建の背景には、靖國神社と同様に、公のため身命を賭して尽くした功労者を、畏き神として祀る、近代以前からの信仰の水脈が流れているといえるのです。