社殿について

社殿の建築様式―神明造と大社造

各地の神社におまいりすると、それぞれの神社で社殿の造りが異なっていることに気がつきます。
建物自体を細部まで見るとその違いは多岐にわたりますが、その様式は大きく2つに分けることができます。

1つは、高床式の穀物蔵の形から発達した「神明造(しんめいづくり)」です。「神明造」とは、伊勢神宮を代表としてみられる様式で、棟を境に本を開いたように屋根が両側に流れている「切妻(きりづま)造」の屋根と、「平」側に入口がある「平入(ひらいり)」という形になっています。

中でも、伊勢神宮は地面に穴を掘って柱を立てる「掘立柱」の「切妻造平入萱葺」の様式で、特に「唯一神明造」と呼ばれています。

この神明造から派生したものとしては、屋根の前面が長くのばし向拝(参拝者のための廂(ひさし))となっている「流造(ながれづくり)」や、切妻平入の建物が2棟連結している「八幡造(はちまんづくり)」などがあります。
流造は上賀茂神社・下鴨神社、八幡造は宇佐神宮・石清水八幡宮などに代表される様式です。

もう1つは、古代の住居の形から発達した「大社造(たいしゃづくり)」です。
「大社造」とは、出雲大社に代表される様式であり、切妻造の屋根の「妻」が正面に見える方に入口があるため、これを妻入(つまいり)といいます。
この「大社造」の流を汲むのが、住吉大社の「住吉造」や春日大社の「春日造」です。

このほか、京都の北野天満宮などに見られる「権現造(ごんげんづくり)」、静岡の富士山本宮浅間大社などに見られる「浅間造」などがあります。
権現造は、本殿・幣殿・拝殿が連結した構造で、屋根の頭数が多く複雑になっており、浅間造は拝殿の上に流造の本殿が乗り、重層構造となっています。

地域や信仰により、さまざまな社殿様式が形成されましたが、その時代の建築技術の粋を集めたものであることは確かです。

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