天照大御神の御誕生

伊邪那岐命(いざなぎのみこと)は黄泉国(よもつくに)から命からがら逃げ帰りました。

すると「私はなんと醜く、酷く穢れた国に行っていたものだ。禊をして体を洗い清めよう」といって、竺紫(つくし)の日向(ひむか)の橘(たちばな)の小門(おど)の阿波岐原(あわぎはら)という海辺を訪れました。

伊邪那岐命は、身に着けていた物を次々と脱ぎすてると、それらの物から次々と神さまがお生まれになりました。

そして、伊邪那岐命は「上の瀬は流れが激しい。また、下の瀬は流れが弱いな」というと、中の瀬に飛び込み、流水で体を濯(そそ)ぎました。

すると黄泉国の穢れが取れ、そこから神さまが生まれました。次に穢れを直そうとする神さまが生まれました。また、水の底や、水の中、水の表面で体を濯いだ時にも神さまが生まれました。

そして、伊邪那岐命が左の目を洗ったときに生まれた神さまの名前は天照大御神。次に右目を洗ったときに生まれた神さまの名前は月読命。次に鼻を洗ったときに生まれた神さまの名前は建速須佐之男命といいました。

これには伊邪那岐命は大変お喜びになり「私は子を生んだけれど、最後に3柱のとても尊い子を得ることができた」とおっしゃいました。そして、首飾りをサラサラと鳴らして天照大御神に授けると、「あなたは高天原を治めなさい」とお命じになられました。こうして天照大御神は高天原を治める神さまとなられました。

神話 天照大御神の御誕生について

皇室の祖先神である天照大御神は、八百万(やおよろず)の神々の中でも最も尊い神様とされ、三重県伊勢市に鎮座する伊勢神宮にお祀りされています。『日本書紀』によると、お生まれになったとき「此(こ)の子(みこ)、光華明彩(ひかりうるわしく)、六合(あめつち)の内に照り徹(とお)らせり」とあらわされています。これは、「この上なくまばゆいその御存在は、世の津々浦々までに広く行き届く」という意味で、神々のなかでも格別な御存在だと形容されています。

用語解説

『古事記』や『日本書紀』において、日本の国や神々をお生みになったとされる神さま。

神さまを数えるときに使用される単位のこと。1柱(ひとはしら)、2柱(ふたはしら)と数える。

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